読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

荒野の部屋

さみしさの匂いを消してください どうしてもぼくのところまで届いてしまうのです あなたのさみしさは、悲しみの奔流となってぼくを包み込んでしまう 息をするのも苦しいくらいに、ぼくを包み込んでしまう だから、さみしさの匂いは消してください 笑顔の消え…

読書の愉楽(続・続・続・続・続・続)

いままで本を読んでいて、寝食を忘れるくらいのめり込んで読んだ本というのは数えるほどしかない。 一番最初に経験したのが高校のときに読んだ山田風太郎「魔界転生」だ。これを、あまたある忍法帖のベスト1に挙げる人も多いように(事実、ぼく自身も過去に…

記憶の襞

凪の辻に向かって記憶を辿ってきた道は、曖昧さと困惑を微妙にブレンドした重石を心にのせて歩く苦難 の道だった。踏みしめる道の表面は粗く割られた土器の破片が敷きつめられている。炎天下の暑気にやら れて隣りを歩くオッチも今にも倒れそうだ。 少し先に…

野村美月「文学少女と月花を孕く水妖」

もう最終巻が出てしまったこの文学少女シリーズ。これはいけないとあわてて本書を読んでみたのだが、 本作は時系列的には第二巻のあとの話となる。ここへきてどうして過去に戻るのか?ここで語られるのは 学園の女王である姫倉麻貴の血族の歴史である。いま…

鏡明「不確定世界の探偵物語」

たった一台のタイムマシンによって改変されていく世界。過去に干渉することによって、いきなり目の前の人が別人になったり、風景が変わってしまったりする驚異の世界。ワンダーマシンとよばれるその装置を所有し、世界を掌中にする男の名はエドワード・ブラ…

フレッド・ヴァルガス「論理は右手に」

「本が好き!」の献本である。 この人は、本書のシリーズ第一弾である「死者を起こせ」とゆきあやさんもそこそこの評価をしていた別シリーズの「青チョークの男」の二作邦訳が出ていて、概ね好評だったと記憶している。 ぼくも「死者を起こせ」は読もうと思…

古本購入記 2008年4月度

4月度購入の古本は、13作品15冊。ま、妥当な線かな。 例のごとく、タイトルを挙げていくと 「弥勒戦争」 山田正紀 「最後の願い」 光原百合 「エッシャー宇宙の殺人」 荒巻義雄 「てんのじ村」 難波利三 「殺人者志願」 岡嶋二人 「グランド・アヴェニ…

西村寿行「症候群」

こういう話から、えらく隔てられていたなぁと思った。ぼくも男ですから、昔はこういうハードなエロティックバイオレンスというジャンルをむさぼるように読んだものだった。その頃の主流はもう西村寿行でなくて、菊池秀行と夢枕獏だったのだが。 菊地、夢枕の…

プロイスラー「大どろぼうホッツェンプロッツ」

いまさらなのだが、この児童文学の名作を読んでみた。プロイスラーといえば、「クラバート」をいつか読もうと思って買ってあるのだが、これはいまだに読めていない。 だが、プロイスラーといえば「大どろぼうホッツェンプロッツ」なのである。この名作を子ど…