読書の愉楽

本の紹介を中心にいろいろ書いております。

2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

御影瑛路「神栖麗奈は此処にいる」

ジャンルを特定できない。ホラーの要素もあるように思うしミステリーに入れてもいいような気もする。 事象と存在に対するこの作者なりの考えが描かれている。 哲学の領域ともいえる難解な問題をからめ、当事者たちの平易な毎日にまぎれこむ死を描いている。 …

マグノリア

こんなにも 世界は残酷で 死にあふれ 苦痛に満ちているのに ぼくは平凡な毎日をなにげなく過ごしている 刺激を求めて 視線を彷徨わせて よるべなき道筋に 生まれゆく子どもたちは 何にもまして 窮屈で閉ざされている ああ、なにが正しくてなにが間違っている…

ロス・マクドナルド「さむけ」

本書は素晴らしい。 かつて、こんなに本格に近づいたハードボイルドがあっただろうか。 いや驚きはそれだけではない。本書の扱っているテーマには人間の弱さを見せつけられてしまった。親と子の悲劇。次々とあらわれる登場人物たちの内面には、悲劇がすみつ…

ぼくは雨がすきです 胸が躍るくらいすきです 平凡な毎日が長く続いたおりに突然降る雨などは、とてもすきです 濡れた木の葉からしたたる露 水を含んで、幾分か重たくなったような石 けぶる景色のなかにぼくが飛びます ウルトラマリーンの海を泳ぐようにぼく…

恩田陸「象と耳鳴り」

全体的に本格テイスト満開なのだが、どうもしっくりこない。 そんな中でも印象に残ったものを上げれば「曜変天目の夜」と「待合室の冒険」くらいか。 惜しいなと思った作品は多い。「給水塔」はブランドの「ジェミニ―・クリケット事件」にも似た白熱 した推…

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エリザベス・コストヴァ「ヒストリアン」

ヒストリアンとは「歴史家」のことを指す。 最初ぼくは「ダ・ヴィンチ・コード」のような歴史の謎+聖書ミステリー+オカルトみたいなものを期待していた。読みはじめた感触では、大いに期待をそそる雰囲気だった。 しかし、50ページくらいから壮大な歴史…